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2009年8月号(7月1日発売)表紙
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編集長から (2005年8月1日)

 オートバイの試乗は私の仕事の重要な一部だ。直接的な目的としては試乗記を書くためである。そのオートバイがどんな走り方をし、どのような印象を与える機械なのかを皆さんにお伝えするための文章で、ロードインプレッションとも呼ばれる。私は、自分がこれを書かない場合もできるかぎり取材に同行し、原稿を担当するライダーと一緒に走るようにしている。新車にせよ改造車にせよ旧車にせよ(旧車の場合は私が原稿を書くことが多いが)、それらのオートバイがどう走るかを知りたいからである。バイカーズステーションという本の性格上、編集長はオートバイを動的に知っていたほうがよかろう…というのは乗りたがり屋の言い訳かもしれないが嘘でもない。
 私が試乗記を書き始めたのは1980年前後だ。そのころの試乗記で一般的に最も重要視されていたのは、エンジン、コーナリング、ブレーキなどの能力がどのくらい高まったかだった。前の型より速いことの証明と、ライバル他車との性能比較が第一目的で、乗ってのフィーリングはもちろん書かれたが、まあ、重要度は2番目以下といってよかった。
 現在でもレーサーレプリカでは速い遅いが大事にされるが、それにしても乗り手がそのモデルをどう楽しめるかが欠かせない項目になっている。ウチの本では、むしろこっちほうが上位である。日本の峠で999より749のほうが快感が上なら、そっちのほうを上位に評価するといった具合である。なぜこうなってきたのかというと、多くのスポーツモデルが、一般のライダーが乗るには充分以上の性能を身につけたためだ。スポーツライディングの快感のひとつにエンジンを回し切ることがあるが、過大な出力はこの楽しみを削ぐのである。
 こういう時代のテストライダーに求められるのは、オートバイを上手に乗れること以上に、心の底からエンジン付きの2輪車を楽しむ気持ちがあるかどうかになる。したがって、いろいろな機種に乗って、多方面の味わいを楽しんでおくことは大事である。いや、欠かせない。
 ここ数カ月にしても、MVアグスタのF4を体験したうえでビモータKB1に乗ることによって、マッシモ・タンブリーニの設計哲学を知ったり、'89年型のGSX-R750RのSTD車を走らせることで、この年代の日本製レプリカのフレーム設計がある種の過渡期にあったことを確認したり(ともに9月号参照)と、これまでになかった感動や知識を試乗から得ることが多くなってきたから、ますます幅広い試乗をすることが面白い。というわけで、私にとってこれ以上いい商売はないのだが、有限の時間をどうやりくりするかという問題にはいつも悩まされる。
 最近乗った車両で最も感激したのはビモータのKB1で、これについては9月号で和歌山さんが詳しく書いていあるが、私も心底1台欲しいと思った。しかし、ブライトロジックの素晴らしい仕事とパーツ代の合計が300万円ほどで、ベース車両が200万円前後はするから、今のところちょっと手が出せない。
 もう1台印象に残ったのは、STD車が走らせて無味乾燥なのに対して、改造後の快感が比較にならないほど大きかった'89年型のGSX-R750R。長めの燃料タンクを抱きながら、当時のレーシングマシーンはこうだったんだろうなあと想像しつつ、12000rpmのレブリミットへ向けて750ccの油冷エンジンを回し切ってコーナーを立ち上がるときの興奮は、ちょっと昔のレーサーレプリカファンにはこたえられない快感であるはずだ。この車両については、試乗記だけでなく、テクニカルガレージ・ランの杉本さんによる造り方も含めて10月号でお伝えする。また、以前ここに'70年代のZの改造についての、インターバルの今井さんによる手法公開の予告をしたが、それも近日中にまとめたいと思う。
 1970〜80年代の車両をベースにした、実に立派な、気持ちよく走る改造車がたくさん出てきたのは、市販車が速すぎるせいかもしれない。私など、それなら、そういう味わいの新型車を造ればいいのにと思うが、車両メーカーの人たちは同じ考え方ではないようだ。ちょっと方向は違うかもしれないが、馬力がありすぎず、走ってバランスよく、さらに買ったままで改造しなくてよいという意味での私の推奨車はホンダのCB400SFのバージョン3以降だが、本誌読者の皆様にはちと排気量が小さすぎるのであろうか、真に受けて買ったという手紙はいただいたことがない。
 話変わって(関連しなくもない)、1000ccのレーサーレプリカ(というか、これらをベースに今のスーパーバイクレースが行われているのだが)が速すぎるのは事実だが、では600〜650ccはどうかということで、10月号ではこれを5台集めての比較試乗を予定している。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4台と、5台目はトライアンフだ。こちらのほうも楽しみにお待ちいただきたい。

佐藤康郎